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鹿児島地方裁判所 昭和52年(わ)140号 判決 1979年2月14日

本店所在地

鹿児島県熊毛郡上屋久町宮之浦八二〇番地

金井産業有限会社

右代表者代表取締役

金井春男

本籍及び住居

鹿児島県熊毛郡上屋久町宮之浦二九八番地

会社役員

金井春男

大正三年二月二七日生

本籍及び住居

鹿児島県熊毛郡上屋久町宮之浦二九八番地

会社役員

金井一枝

大正二年九月六日生

右三名に対する法人税法違反被告事件について、当裁判所は検察官新保昌道出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告法人を罰金七〇〇万円に、被告人金井春男を懲役八月に、被告人金井一枝を懲役四月にそれぞれ処する。

被告人両名に対しこの裁判確定の日から各二年間右各刑の執行を猶予する。

訴訟費用は全部被告法人及び被告人両名の連帯負担とする。

理由

(罰となるべき事実)

被告金井産業有限会社は、鹿児島県熊毛郡上屋久町宮之浦八二〇番地に本店を置き、屋久杉工芸品の製造販売を主たる営業目的とするもの、被告人金井春男は被告会社の代表取締役として業務全般を統轄しているもの、同金井一枝は被告会社の常務取締役として経理面を担当しているものであるが、被告人両名は共謀のうえ被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、売上金の一部を除外して架空名義の預金に預入れ、又は棚卸商品を過少に計上する等の不正手段により所得の一部を秘匿したうえ

第一、昭和四八年三月一日から同四九年二月二八日までの事業年度における被告会社の所得金額は四、一三二万八、二五四円で、これに対する法人税額は一、四九二万五、五〇〇円であつたのに、同四九年四月三〇日同県西之表市大字西之表字下小牧九、七八六番地種子島税務署において、同税務署長に対し、同事業年度の所得金額は九九万九、六〇五円で、これに対する法人税額は二七万九、七〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて被告会社の右事業年度の正規の右法人税額との差額一、四六四万五、八〇〇円を免れ

第二  同四九年三月一日から同五〇年二月二八日までの事業年度における被告会社の所得金額は五、三八三万八、七七八円で、これに対する法人税額は二、〇八一万五、二〇〇円であつたのに、同五〇年四月二三日前同税務署において、同税務署長に対し、同事業年度の所得金額は一三一万七、五八九円で、これに対する法人税額は三六万八、七〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて被告会社の右事業年度の正規の法人税額と右法人税額との差額二、〇四四万六、五〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の項目)

判示事実全部につき

一、登記官滝本一則作成の登記簿謄本六通(証拠等関係カード(請求者検察官)番号1・114~117・122以下単に算用数字のみを記す)

一、種子島税務署長丸野範雄作成の青色申告の承認の取消通知書謄本(2)

一、大蔵事務官作成の久保満郎・木原実・本吉俊一・朝倉頴子・飯田薩男・木原哲志・金井良憲・金井シサ子に対する各質問てん末書(3・6・7・12・70・78・147・152・153)

一、久保満郎・三橋正史・木原実・丸山勇・朝倉頴子・飯田薩男・中馬五夫・羽生元夫・池本宗生・黒岩寛吾・木原哲志・木原省三の検察官に対する各供述調書(4・5・9・10・11・13・67・72・79・82・91・109・144・146・151)

一、中馬五夫・黒岩寛吾・沖野忠徹作成の各上申書(80・143・150・185・198・201・202・203)

一、大蔵事務官作成の臨検てん末書(15)

一、大蔵事務官作成の写真撮影報告書(16)

一、鏑流正明・渡辺静男・川畑徳蔵・諏訪重典・豊釜速男・軸屋昌典・平田稔作成の証明書一九通(41・43~46・48~53・56・57~59・81・148・149・171)

一、検察事務官作成の報告書(47)

一、大蔵事務官作成の検査てん末書一〇通(60・62・64・66・68・71・76・108・139・141)

一、大蔵事務官作成の調査事績書一九通(61・63・65・75・77・88・92・105・129・132・133・136・142・169・170・172・174・181・182)

一、新豊和夫・平瀬戸清冬・横山亮一・中溝二郎・日高博志・吉崎通・鈴木実・山根一雄・秋山泰蔵・梶谷丈太郎・芝五雄・馬場一吉・大井昭雄・長友雄二・松岡弘・上村慶三・吉川住之助作成の各取引内容の照会に対する回答書(89・90・106・107・110・130・134・135・137・140・173・175・176~180))

一、検察官作成の電話聴取書(145)

一、大蔵事務官作成の間税部犯則処分関係書類一冊(183)

一、押収してある法人税決議書綴一綴、税務関係書類綴一綴・昭和四八年・同四九年・同五〇年各二月期総勘定元帳三綴・昭和四八年二月期金銭出納帳一冊・普通預金元帳二綴・同一枚・(昭和五二年押第一二三号符1、2・4~7・11・12・13)

一、被告人両名の当公判廷における供述(但し前記認定に反する部分は除く)及び同人らの検察官に対する各供述調書

一、被告人両名作成の各上申書

一、大蔵事務官の被告人両名に対する各質問てん末書

判示第一の事実につき

一、鏑流馬正明作成の証明書(54)

一、大蔵事務官作成の調査事績書三通(73・83・155)

一、大蔵事務官作成の検査てん末書三通(74・111・131)

一、荒木百合子作成の取引内容の照会に対する回答書(84)

一、斉藤一己作成の上申書(100)

一、家城大海の国有地払下げ価額照会に対する回答書(102)

一、登記官滝本一則作成の登記簿謄本六通(103・104・118~121)

一、金井産業有限会社作成の物品税納税申告書の写(217~227)

一、押収してある領収証二枚(同号符8・9)

判示第二の事実につき

一、木原実・大迫義信・渡辺靖之・五所則光・堀賢蔵作成の各上申書(8・99・112・154・158)

一、鏑流馬正明・諏訪重典作成の各証明書(42・55)

一、平河裕治・越智正利・越智ミエ・岩川周利・岩川則隆・岩山喜美男・堀賢蔵の検察官に対する各供述調書(69・95~98・128・160・161)

一、大蔵事務官作成の調査事績書四通(85・86・101・156)

一、大蔵事務官の越智正利・堀賢蔵に対する質問てん末書三通(93・94・157)

一、登記官滝本一則作成の登記簿謄本(123)

一、林直美・前野安男作成の取引内容の照会に対する回答書二通(87・138)

一、大蔵事務官作成の検査てん末書一通(159)

一、検察官作成の証拠資料受領報告書(127)

一、高山栄作の捜査照会に対する回答書一綴(163)

一、大蔵建設株式会社振出の約束手形写四枚(165~168)

一、金井産業有限会社作成の物品税申告書一二通(228~239)

一、押収してある昭和四九年度領収綴一綴・領収証一枚(同号符3・10)

(法令の適用)

一、判示所為 被告人両名につき 法人税法一五九条・刑法六〇条

被告法人につき 法人税法一六四条一項

一、刑の選択 被告人両名につき 所定刑中懲役刑選択

一、併合罪加重 被告人両名につき 刑法四五条前段・四七条本文・一〇条(犯情の重い判示第二の罰の刑に加重)

被告法人につき 刑法四五条前段・四八条二項・一〇条

一、刑の執行猶予 被告人両名につき 刑法二五条一項

一、訴訟費用負担 刑事訴訟法一八一条一項本文

(補足説明)

被告人及び弁護人は結局、本件公訴事実中、当該ほ脱期における物品税ほ脱額は本件ほ脱期後の納付であるが、ほ脱期の直税未払金に計上すべきであるので、本件被告法人の損金が増加し、従つて、所得金額は減少することになるとしてこの点のみを争うので、この点につき述べる。

物品税その他の申告納税方式による租税は、納税申告書に記載された税額については、当該申告書の提出された日の属する事業年度の損金に算入し、更正又は決定にかかる税額については、その更正・決定があつた事業年度の損金に算入されるとすることは、法人税基本通達九-五-一(1)に規定されているところであり、弁護人の主張には法的根拠のないこと、さらに前記各証拠を総合すると、被告会社および被告人両名は、各ほ脱期の物品税については製造場から移出したテーブル・ツイタテ類など一部を申告したのみで他の家具類についてはすべてほ脱しており、また当該年度の未払金にも計上していないことは明らかであるので、未申告の家具類については当該年度において納税義務には成立していても税額は未確定であり、従つて債務が確定していないから前記通達の趣旨からして当該ほ脱期の損金に算入することはできない。

従つて、被告人・弁護人のこの点に関する主張は採用しえない。

よつて、主文のとおり判決する。

(裁判官 小田八重子)

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